公益財団法人 腸内細菌学会/腸内細菌学会 Japan Bifidus Foundation(JBF)/Intestinal Microbiology

用語集


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菌叢の多様性(diversity of microbiota)

細菌叢や真菌叢などの微生物叢の構造を理解・比較するために使われる指標である。α多様性とβ多様性に大別され、α多様性は1つの菌叢(サンプル)の構造に関わる指標であり、β多様性は2つ以上の菌叢構造の相違性の指標である。

α多様性を表す指標として腸内細菌叢研究で頻用されるのはChao1とShannon指数だが、菌叢解析のパッケージであるQIIME2では、ACEやSimpsonなど他の指標も算出することができる。指標によって計算方法が異なるため、それぞれの指標がもつ意味も異なる点に注意が必要である。Chao1は「種の豊富さ(Richness)」を推定する指標で、特にレアな種(出現率の低い種)の影響を強く受ける。ACEも同様に「種の豊富さ」の指標だが、Chao1に比べるとシングルトンやダブルトン(その菌叢に1回もしくは2回だけしか観察されない種)の数の影響を受けにくいとされる。いずれも、菌叢に存在する種数が多ければ多いほど高い値となる。Shannon指数は「均等度(Evenness)」の指標で、菌叢内の種の分布バランスの指標ともいえる(ただし、種数の影響も完全に排除されてはいない)。例えば、ある細菌叢にA~Eの5種類の細菌が存在している場合、パターン1(A: 80%、B: 5%、C: 5%、D: 5%。E: 5%)、パターン2 (A: 20%、B: 20%、C: 20%、D: 20%。E: 20%)の2つのパターンでは、後者の方が高い値となる。Simpson指数も均等度を表す指標だが、定義や表記に複数のバリエーションが存在するため、本稿での詳細な説明は省略する。

β多様性は菌叢同士がどれくらい似ているか(似ていないか)を評価する指標である。β多様性は、ある菌叢と別の菌叢の距離(dissimilarity)で表すのが一般的で、菌叢同士の構造が似ているほど距離は小さく、構造の違いが大きいほど距離が大きく算出される。複数の距離計算法があり、腸内細菌叢解析で頻用されるのはUniFrac距離、Bray-Curtis距離だが、近年ではその他の距離計算法を使った報告も増えている。UniFrac距離は菌叢に存在する種の系統的距離も加味した距離計算法であり、同種でなくとも近縁種が多い方が、遠縁種が多い場合よりも距離が近く算出される。Weighted UniFrac距離とUnweighted UniFrac距離があるが、前者は各菌種の存在量を距離計算に加味したもので、後者は存在量を考慮せずに、存在の有無のみで距離計算を行う。簡易的には、前者は構造のなかの優占種の違い、後者はレア種の違いの影響を受けやすいと考えると良い。Bray-Curtis距離はWeighted UniFrac距離と同様に各菌種の存在量を距離計算に加味するが系統的距離は考慮しない計算法である。

(井上 亮)